治療を前にしてから数ヶ月経っているけれど、そもそも歯医者さんに行く頻度はどの程度行けば良いのだろう…と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。歯が痛くなってから行けばよいと考えている方は大間違いです。一度削ってしまった歯は元に戻ることはありませんので、自分の歯を守るためには歯科健診へ行くことが何より大事です。
しかし、いざ歯医者さんへ行こうと決意しても、日々の生活や仕事に追われていると、なかなか足を運べないのが現状です。そこで、この記事では歯医者さんに行くタイミングを失っている方のために、定期的に健診行く意味や歯医者さんに行く頻度について、わかりやすくご説明します。ぜひ参考にして下さい。
この記事の目次
1.定期健診で歯医者さんへ行く頻度とは
一般的にどれくらいの頻度で歯医者さんへ行けば良いのかをご紹介します。
1-1 最低でも、半年に1回は歯医者さんへ
一般的には、虫歯がない場合でも半年に1回は歯医者さんに行くことがおすすめです。しかし、お口の中の環境は人により大きく異なり、歯科健診の回数も個人差があります。まずは歯医者さんに行き、歯の質、唾液の量、食生活などを相談した上で、どれくらいの頻度で健診を受けるべきか、自分にあった健診の回数を決めることが大切です。
1-2 定期的に健診を受ける意味
健康診断と同じように、お口の中の病気を早期発見するためには、定期的な健診が必要です。虫歯や歯周病だけではなく、お口の中の粘膜や舌の状態など、歯医者さんはお口の中全体を診ています。
2.ケース別、歯医者さんへ行く頻度とは
では、さらに具体的にどれくらいの頻度で健診を受けるべきでしょうか。ここでは、それぞれのケースに合わせて歯科健診行く目安をご紹介します。
2-1 年齢によって通う頻度が変わる
歯医者さんに行くタイミングが全くわからないという方は、こちらを参考にして下さい。
6ヶ月に1回 | 3ヶ月に1回 | 1~2ヶ月に1回 | |
子供 | ○ | ||
20代~30代 | ○ | ||
30代~ | ○ |
年齢によって、歯医者に行く回数は変わります。30代以降は、歯周病のリスクが高くなるため3カ月に1回の健診が理想です。どうしても歯医者さんへ行く日を忘れてしまうという方は、夏休みや冬休み、誕生月など、歯医者さんに行く時期を事前に決めておくのがおすすめです。
2-2 虫歯歴別
過去に虫歯が多かった人は、短い間隔で歯科健診へ行くとより安心です。
虫歯歴/回数 | 6カ月に1回程度 | 3カ月に1回程度 | 1~2カ月に1回程度 |
虫歯なし | ○ | ||
虫歯が数本&過去に治療歴が数回ある | ○ | ||
虫歯が多い&過去の治療歴がたくさんある | ○ |
食事をするたびにお口の中では、歯は溶けて、また元に戻るという修復作業を繰り返しています。しかし、このバランスが崩れて、修復が追いつかないと虫歯になります。つまり、虫歯がない人と虫歯が多い人の差は、このバランスが関係しているのです。虫歯の多い人は、お口の中のバランスが崩れやすい傾向があるので食生活にも注意が必要です。
2-3 歯周病別
自覚症状がないまま進行する恐ろしい病気が歯周病です。重症化しないように、健診へ行くことが求められています。
歯周ポケット/回数 | 6カ月に1回程度 | 3カ月に1回程度 | 1~2カ月に1回程度 |
3㎜程度以内 | ○ | ||
4㎜程度数か所ある | ○ | ||
5㎜程度以上がある | ○ |
歯と歯茎のすき間にある溝を「歯周ポケット」と呼びます。歯磨きがキレイにできていないと、この歯周ポケットに細菌が溜まり、歯茎の内部に炎症を起こします。この炎症が歯周病です。歯周病が進行すると歯周ポケットが深くなり、放置すると歯が抜け落ちてしまいます。
3.ライフステージに合わせた歯医者さん活用術
健康な歯を保つことは、胎児の頃からスタートしています。この自分だけの歯を生涯にわたり維持するためには、ライフステージとともに起こる歯の変化に気付き、歯医者さんを上手に活用することが大切です。
3-1 子供の歯
乳歯の虫歯を放置するとお口の中には、バイ菌が増え新しく生えかわる永久歯も虫歯になりやすくなります。生涯使う永久歯を守るために、乳歯の頃から歯磨きを徹底するなど、親がしっかり管理して下さい。子供の歯と健康を守れるのは、親だけです。そして、子供の頃から歯医者さんへ通う「良い習慣」を身に付けることが将来の健康につながります。
【歯医者さんでできる子供の虫歯予防】
①1歳6カ月児&3歳児向けの無料歯科健診
自治体によって、1歳6カ月児と3歳児向けに歯科健診があります。
②フッ素塗布
フッ素は、歯の質を強化し、虫歯になりにくくします。3カ月に1回は歯医者さんでフッ素塗布を受けると安心です。
③シーラント
子供の奥歯の溝は、歯ブラシが届きにくいため虫歯になりやすい場所です。虫歯になる前の予防として、奥歯の溝をふさぐ処置ができます。
3-2 男性の歯
虫歯や歯周病には、男女の「性差」があります。女性は、男性より虫歯や歯周病にかかりやすい傾向があります。しかし、その一方で虫歯や歯周病が重症化しやすいのは男性です。実際、厚労省の歯科疾患実態調査を見ると、男性は歯の治療をせずに放置している人が多いという報告があります。痛みを我慢したり、忙しさから虫歯を放置したりせず、働き盛りの男性こそ歯医者さんを積極的に利用するべきです。
3-3 女性の歯
女性は男性よりも唾液の量が少なく、虫歯になりやすいことが研究によりわかっています。その上、女性ホルモンが深く関係しており、更年期になるとドライマウスや歯周病のリスクがさらに高まります。3カ月から半年に1度は、定期的な健診を受けることが大切です。
【妊娠期の注意点】
妊娠中は、女性ホルモンの増加やつわりなどで歯磨きが不十分になるため、妊娠性歯肉炎や虫歯など、お口の中のトラブルが起きやすい時期です。お母さんの歯の健康は、赤ちゃんの健康にも影響するため、妊娠がわかった時点で早めに歯科健診を受けて下さい。自治体によっては無料の「妊婦歯科健診」を行っているので、ぜひ利用して下さい。
3-4 高齢者の歯
加齢とともに、歯茎がやせる、入れ歯が合わなくなるなど、お口の中のトラブルが増えてきます。もし、高齢の方が歯を失うと、認知症のリスクは2倍となり、運動機能も低下します。それでも、通院が難しいという方も中にはいるかもしれません。
そこで注目してほしいのが「訪問歯科診療」です。まだ、この存在が広く知られていませんが、日本の訪問歯科医療はレベルの高いものです。地域の歯科医師会や保健所などに相談してみて下さい。
4.歯科健診って何をするの?
ここでは、歯科健診の内容についてご紹介します。あらかじめ、歯科健診の内容や費用を知っていると、リラックスして歯医者さんに行くことができます。
4-1歯科健診の内容
①虫歯確認
歯の側面や裏側など、歯の状態を細かく確認します。
②歯周病確認
歯茎の腫れ、歯周ポケットの深さや出血を確認します。
③クリーニング
専用の機器を使用し、普段の歯磨きでは落とせない汚れを取り除きます。
④ブラッシング指導と歯科相談
自分の歯磨きが正しいのか、歯ブラシやデンタルフロスなどの使い方を指導します。
また、それぞれの歯の悩みに歯医者さんが相談にのってくれます。
4-2 歯科健診の費用
歯科健診にかかる費用は、歯医者さんによって異なりますが一般的に3000円から4000円程度です。年間、数回歯科健診に行くとしても、1万円程度です。これは、虫歯治療と比較すると、費用も時間も身体への負担も軽く済みます。
また、自治体の調査によると、「歯の数が多い人ほど、全身にかかる医療費が少ない」という報告があります。歯科健診をすることは、結果的に医療費の節約になります。
5.まとめ
「歯医者さんには虫歯ができたら行けば良い」、「年を取ったら入れ歯になるのは当たり前」という考え方は、昔の間違った常識です。虫歯がない場合でも、歯科健診には3カ月に1回へ行くことをおすすめします。
また、実際「どれくらいの頻度で通うべきか」に決まりはなく、間隔が短くても問題はありません。歯医者さんとコミュニケーションを図り、気軽に相談できるように積極的に歯医者さんへ行くことが重要です。
経歴
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年~ (医)友歯会ユー歯科~ 箱根、横浜、青山、身延の診療所 勤務
1985年 コージ歯科 開業
1996年~2002年 日本大学松戸歯学部生化学教室 研究生
歯学博士号 取得
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る
執筆者:
歯科+では、読者の方々のお口・歯に関する”お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。