最近、新聞や雑誌等でよく目にする「インフォームドコンセント」。「インフォームドコンセントが不十分で・・・」「しっかりとしたインフォームドコンセントを受けることができて・・・」口コミサイトをみていくと、こんな単語を見受けられます。
この言葉、最近よく耳にするようになりましたが、実際、多くの人は正しい意味を知らないのではないでしょうか?
医療用語なだけに、難しい専門的な事なんでしょ?とか思うかもしれませんが、実は、病院に通う全ての人に関わるとても大切な言葉です。これを知っているのと知らないのとでは大違い。明日からの通院も少し前向きになれるかもしれませんよ。
この記事の目次
1.インフォームドコンセントってなに?
「インフォームドコンセント」というのはアメリカで生まれた考え方で、直訳すると「十分な説明を受けた上での同意」といわれています。
医師は患者に対し、医療行為について十分な説明を施し、患者の同意を得た上で、それを実行するという考え方です。
あまり馴染みのない言葉である「インフォームドコンセント」ですが、意外や意外、病院に行ったことのある人であれば、一度はインフォームドコンセントを経験されているはずです。
例えば、病院に行ってお薬を受け取るとき、薬剤師さんが出された薬の服用方法や効能、副作用などについて、「~です」「~することがあります」「~で大丈夫ですか?」「~どうしますか?」と、一つひとつ確認しながら丁寧に教えてくれますよね。(あー、いつもと同じのだ。と聞き流してしまうことが多い筆者ですが)実はこのお薬の説明こそが「インフォームドコンセント」なのです。
近年では、人医療はもちろんのこと、動物医療などにおいても「インフォームドコンセント」が大切であるとの認識が一般的になってきています。
2.インフォームドコンセントがなぜ必要なのか
インフォームドコンセントとは、医療側が十分な説明を行い、それを患者側が理解して納得した上で、自身にとって最善と思われる治療法を自ら選択するということです。
医師は患者が最良の判断を下せるよう、今どういう状況で、何が原因か、どのいう治療法が考えられるか、それぞれのメリット・デメリットは何か、そして今後の予後の予想はどうなのかということを説明してくれます。
患者側はそれらの情報を元に、治療期間・費用・その他の事情などをいろいろと考慮して、数ある選択肢の中から自分の希望に最も合うと思った治療プランを決めます。なので、あくまで医師側は治療の選択肢を提示するだけで、最終的に治療の内容を決めていくのは患者側となります。
一昔前は、先生が「こうしますから」と決めた治療内容に、患者側は身を任せるだけでした。歯医者の場合、手や足などと違って、治療中に自分の口の中を見ることはできませんから、気がついたら説明もなしにどんどん治療が進んでいて、患者は何処に何をされているのか結局全然わからなかった・・・なんてことも多かったかもしれません。
2-1インフォームドコンセントによるメリット
最大のメリットは、
医療側からの十分な説明を受けた上で、患者自身にとって最善と思われる治療法を自ら選択することができるということです。
患者側は自分の意思で、医療行為をよく知った上で治療を受けるわけですから、必然的に安心して治療を受けることができます。
2-2インフォームドコンセントによるデメリット
反対にデメリットは、
患者側に選択する自由が生まれる代わりに、選択することに対しての責任が生じます。
一度は経験のあるお薬の服用方法、効能・副作用の説明といったものであれば、さほど求められるもの・責任はありませんが、大きな病気となると、そう簡単な話ではありません。
2-3インフォームドコンセントによる問題点
それぞれの治療法には大抵メリット・デメリットというものが存在します。
100%安心してできる治療というものがないからこそ、いろいろな治療法があるわけですが、
それらをひとつひとつメリット・デメリットを天秤にかけて、よい点悪い点を踏まえた上で自分自身にとって最善の選択をすること、これらは医療知識のない側からすると、とても難しく感じるものです。
病気の種類によっては、一つしか選択肢のないものもありますが、複数の治療方法がある病気というものもたくさんあります。
ある治療は効果は高いが、その分高価である、
ある治療は効果は高いが、その分副作用がでる確率が高い、など。
またもっと、身近な選択としては、内服薬で様子を見ていくか、それともリスクを覚悟で思い切って手術してしまい完全に治してしまうか、といったことも選択できますね。
この選択については何を最優先にさせるかは人それぞれとなります。
ある人にとっては優先順位であるメリットが違う人にとっては順位が低い(費用の安さ、治療期間など)ということもあるのです。
3.アメリカ発祥!実は日本ではまだまだ浸透が浅かった!
「インフォームドコンセント」なかなかに耳慣れない言葉ですが、
実はアメリカでは1960年代からインフォームドコンセントの考え方があったのです。
日本にその考え方が入ってきたのは1990年代に入ってからになりますが、
どうしても昔からの考え方の「治療のすべてはお医者さんに任せる」「病気のことは医者に任せよ」という考え方があったために、なかなか浸透しませんでした。
1997年の医療改正にて正式にインフォームドコンセントが義務化され、15年以上経った現在、ようやく世間に広まってきているのが現状です。
4.医療現場で実際に体験したこと
筆者自身が入院した際に、薬投与時、検査時、はたまた入院生活をどの様に送るか、というような計画書について、医師・看護師からたくさんの説明を受けました。
それこそたくさんの検査のある日は、担当医、担当看護師が代わる代わる回診に来ては、検査の意図、使用薬品について、検査前後のことなど、諸注意にしてはとても詳しく、包み隠さず説明がありましたが、まだインフォームドコンセントという言葉を知らなかったときで、あまり気にも留めず説明を聞き流していました。
この言葉を知っていたのならば、医師の「じゃあ、○○検査もしてみようか」という突発的な発言時にも理由を求めることができたのではと思います。
医療の話は難しいからとすべてを任せてしまうのは、責任の放棄となってしまいます。医師はわかりやすく説明することになっていますので、多少難しく感じたら、もっとわかりやすい説明をお願いすることができます。
実際、担当医の説明は幼稚園児にしているような単語でとてもわかりやすかったです。しかし、患者のいないところでの医師同士の会話では専門用語をたくさん使って話していており、自分の病気のことながら、全くわかりませんでした。
医師や看護師に対して、とてもわかりやすい説明をしてくれる病院なんだな、と思っていましたが、実はこのインフォームドコンセントのためだったのですね。
インフォームドコンセントの重要性を認識している医師ならば、患者の気持ちや質問に対してしっかりと向き合ってくれ、再度の説明や、わかりやすい説明にしっかり応じてくれるようです。
5.まとめ
患者としても、積極的に医師とコミュニケーションをとることによって、自分に合った治療内容が選択できるわけですから、治療に対して安心感につながります。
自分で納得した治療をしたほうが、何度も病院に通うことになった場合も、安心できますし、少し気分がいいかもしれませんね。
筆者も医者任せで治療している部分があるので、今後は積極的に医師に病気のことを話し、わからないことは質問して、医師とのコミュニケーションをとっていこうと思った次第です。
ぜひ、皆様も病気になった時は医師任せにせずに、医師とコミュニケーションをとって自身の病気のことをしっかりと考え、自分自身が納得する治療が受けられるようにしていきましょう。
経歴
2007年 第100回歯科医師国家試験合格
2007年 日本歯科大学 生命歯学部卒業
2008年 埼玉県羽生市 医療法人社団正匡会 木村歯科医院
歯科医師としてのホスピタリティの基礎を学ぶ。
2010年 埼玉県新座市 おぐら歯科医院
地域に密着した医院で地域医療に携わり、
小児から高齢者歯科まで治療を行う。
2011年 東京都文京区 後楽園デンタルオフィス
施設の訪問診療などにも携わる。
2015年 東京都港区 青山通り歯科 院長
現在に至る
執筆者:
歯科+では、読者の方々のお口・歯に関する”お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。