歯を再石灰化するって何?再石灰化のメカニズムや促進方法とは

    歯を再石灰化するって何?再石灰化のメカニズムや促進方法とは

    歯磨きやガムのCMで「再石灰化」って言葉を聞いたこと、ありますよね。しかし、どんな現象なのかはよく知らない方のほうが多いでしょう。

    再石灰化とは歯を守るためのメカニズムで、初期の軽い虫歯ならこれで治ります。ここでは、誰でも口の中にある唾液でできてしまう、お手軽な虫歯予防法について詳しくお伝えしていきます。
    「石灰化ってなに?」から始まり、うまく活用する方法まで、再石灰化について知っておくべき情報をチェックしていきましょう。

    この記事の目次

    1.再石灰化とは?

    1-1 再石灰化の役割

    再石灰化とは、簡単にいえば歯を健康な状態に戻す現象です。

    通常口の中はアルカリ性に保たれています。しかし、糖が含まれるごはんやおやつを食べると口の中は酸性になり、歯が溶ける「脱灰(だっかい)」という現象が起こります。再び口の中がアルカリ性に戻ると再石灰化が始まり、脱灰で溶けてしまった箇所を修復します。

    糖を含む食品を食べる

    酸性になり脱灰する

    アルカリ性に戻ったら再石灰化

    糖を含む食品を食べる

    再石灰化は、脱灰で溶かされた歯の表面を、唾液の成分であるカルシウムやリンでエナメル質の結晶を新しく形成し修復するという現象です。
    人間は脱灰と再石灰化のサイクルを繰り返していますが、酸性の時間が長ければ長いほど、再石灰化が追いつかず虫歯は進行します。

    よく、ダラダラ食べると虫歯になりやすいといわれますが、再石灰化の時間が取れなくなるからなのです。

    歯 再石灰化

    1-2 再石灰化のカギは唾液

    唾液の成分の99.5%はただの水で残りの0.5%は、酵素や免疫成分の有機成分と、ナトリウム・カリウム・炭酸水素・無機リン・カルシウムといった無機成分からできています。
    「よだれ」と呼ばれあまりいいイメージはありませんが、再石灰化のカギは唾液です。唾液がなければ口の中はアルカリ性に戻ることはありませんし、再石灰化に必要な成分を行き渡らせることもできません。

    虫歯になりやすい箇所は、歯の溝や歯と歯の間など唾液が入りにくい箇所に集中していますが、汚れが溜まりやすく唾液が行き渡りにくいのが原因です。

    起きている時は平均19mL/1時間ほど分泌されていますが、睡眠時には2mL/1時間と激減してしまうため、虫歯になりやすい状態といえるでしょう。
    寝る前の歯磨きは特に念入りに行うことをおすすめします。

    2.歯の再石灰化=初期の虫歯治療

    2-1 再石灰化が初期の虫歯を治す

    「虫歯=歯医者さんで削って治す」というイメージはありませんか?
    最近では、初期の虫歯は削らず、再石灰化で自然に治るように見守るというのが主流です。

    2-2 虫歯の始まりはエナメル質が溶けること

    虫歯と呼ばれる現象は、実際に歯を食べられているわけではありません。
    脱灰によって溶けるスピードに再石灰化が追いつかないことで、「歯に穴が空いてしまった」というのが、虫歯の正体です。

    歯の表面はエナメル質で覆われています。エナメル質は固く、いわばビルを守る外壁のような役割をしていると考えればイメージしやすいですね。

    エナメル質の下には、神経に通じる穴を持つ象牙質があります。ここまで虫歯が進行してしまうと痛みを伴うようになり、再石灰化での復活は望めません。

    2-3 乳歯や生えたての永久歯は特に注意!

    再石灰化のスゴイ点は、脱灰によって溶けてしまった箇所を以前よりも丈夫なエナメル質に修復する点です。
    これを繰り返すことで、大人の歯は強くなります。

    しかし、乳歯や生えたての永久歯は防御力が弱く、脱灰のによるダメージを受けやすいので、虫歯になりやすい傾向があります。
    子供の歯があっという間に虫歯になってしまう原因の1つはここにあるため、大人よりもしっかり歯磨きする必要があります。

    3.歯の再石灰化を促進する3つの方法

    3-1 間食をしない

    食後の口内は酸性で、30分ほどは強く脱灰が起こっています。ダラダラ食べ続けるとことで、長い時間脱灰が続き、再石灰化が追いつかなくなってしまうのです。

    再石灰化が修復する工程には時間がかかり、その上、途中で脱灰が起こると最初から再石灰化をやり直さなければなりません。
    これを防ぐため、なるべく食べ物を口に入れない時間を長く保つよう心がけましょう。

    3-2 フッ素を味方に付ける

    実は、フッ素には再石灰化を促進させる力があります。また、エナメル質を強くし、酸を作られにくくする効果もあり虫歯予防の強い味方です。フッ素で、虫歯を20%から50%ほど予防できるというデータもあるほどです。

    ですので、フッ素が入った歯磨き粉やうがい薬を使い、虫歯に強い口内環境を作りましょう。
    ドラックストアや歯科医院でさまざまな種類の商品が販売されているため、自分に合ったタイプを歯医者さんの指導の下に選ぶことをおすすめします。

    3-3 唾液の分泌を促進する

    唾液は再石灰化のカギです。1日平均1Lから1.5L分泌されるといわれていますが、ドライマウス気味の方は、十分な量が分泌されていないこともあります。

    食後はキシリトールガムやシュガーレスガムを噛むなど、唾液が出やすい状態にすることをおすすめします。

    4.再石灰化に効く食べ物や悪い食べ物は?

    4-1 再石灰化を邪魔する食べ物

    プラークに潜む虫歯菌が酸を作り出すのに必要なのは「糖」です。
    甘いケーキやジュースだけではなく、たいていの食品には糖が含まれているため油断は禁物です。

    また、酸が歯を溶かすなら、そもそも酸性の食べ物はどうでしょうか?
    レモンやビネガー、ワインにフルーツなど、健康にいいといわれるものの中にも酸を含んだ食べ物はたくさんありますね。
    エナメル質が脱灰するのは「pH5.5以下の酸性の環境になったら」なので、酸性の強い食べ物を口の中にとどめておくのはおすすめできません。

    健康にいいからと、黒酢やフルーツビネガーを飲む習慣や、ワインやビールを飲む習慣があるのに、その後歯磨きしていない方は注意が必要です。

    また、歯に食べかすが付いた状態だと、その部分は再石灰化することができません。歯に詰まりやすいものや付着しやすいものを食べた後は、しっかり歯磨きをしましょう。

    4-2 再石灰化に効く食べ物

    キシリトールは酸を作る材料になりにくく、虫歯菌の活動を弱めるという働きもありため、再石灰化の味方です。

    食後にガムを噛む場合はキシリトールを選ぶといいでしょう。その際チェックしておきたいのは、キシリトールの含有量です。
    市販のガムは30%~70%とかなり幅がありますが、50%以下では十分な効果は望めません。
    歯科医院で購入できるものはほとんどが100%ですので、より高い効果を期待する場合はこちらをおすすめします。

    また、歯ごたえのある食べ物は噛んでるうちに唾液がでるため、再石灰化にも有効です。再石灰化にはカルシウムやミネラルが必要なため、バランスのよい食生活をすることも、再石灰化を後押しすることにつながります。

    5.穴が空いてしまったら再石灰では治らない

    5-1 再石灰化は万能ではない

    エナメル質を溶かし象牙質に到達すると、「虫歯治療」となるケースが多くなります。象牙質も再石灰化しますが、大きな穴が空いてしまうと再石灰化は追いつかなくなります。

    象牙質に穴が開いてしまったら、削って治療しなければなりませんので痛くなくても歯医者さんを受診しましょう。

    6.まとめ

    歯磨きをしない場合でもすぐに虫歯にならないのは、再石灰化が溶けた部分を補修してくれるからです。

    しかし、脱灰と再石灰化のバランスが崩れると虫歯になってしまうため、歯磨きなどのケアをしっかりする必要がありますね。

    監修日:2016年07月31日
    野崎 康弘院長監修
    経歴・プロフィール

    経歴
    ・1990年 日本歯科大学 卒業
    ・1990年 歯科医師免許取得
    ・1990年~1995年 医療法人社団医恵会勤務
    ・1996年 医療法人社団 医康会 ジェイエムビル歯科医院 開設
    ・1999年 プラトンインプラント受講修了医
    ・1999年~2001年 社団法人台東区浅草歯科医師会公衆衛生理事
    ・2011年~2017年 公益社団法人浅草歯科医師会地域医療理事
    ・2011年~2017年 台東区在宅医療連携協議会委員
    ・2014年~2015年 日本歯科医師会生涯研修事業修了
    ・2016年 東京都医師会在宅リーダー研修修了
    ・2016年10月 東京都歯科医師認知症対応能力向上研修修了
    (厚生労働省制定)
    ・2017年~現 台東区介護認定審査委員

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    執筆者:歯科+編集部

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