歯がむずむずしたり、かゆみや違和感を覚えて不快な症状に陥ったりしたことはないでしょうか。このような症状が起こる原因にはいくつか考えられます。そのまま放置していると重篤な状態にになって、治療が困難になるケースもありますから、ただむずむずするだけと軽視しない方がよいでしょう。このような症状が出たら早めに歯科を受診することをおすすめします。
歯のむずむずはなぜ起こってしまうのか、その対策法や放置した場合の危険性などについて説明します。
この記事の目次
1.歯がむずむず!考えられる6つの原因と対策
1-1 歯周病
歯がむずむずとうずく原因で考えられるものには、まず歯周病があります。歯周病は段階的に進行するものであり、進行していても気付かないケースもあるのです。そのため、痛みなどの明らかな自覚症状がなくても、むずむずすると感じたときには早めに歯科へ行くべきです。
歯周病は最初に、プラークなどが原因で歯肉炎を起こすところから始まります。出血や腫れなどが見られ、体の抵抗力の低下によって起こるケースもあります。
これが進行すると歯周炎となり、歯茎や骨などが細菌に感染して侵食が起こります。こうした侵食の状態には、はっきりした自覚症状がない場合が多く、さらに症状の進行を早めてしまう原因にもなるのです。
これが重篤化すると歯槽膿漏となります。周辺組織の侵食が進み、歯を支えることができなくなって、抜け落ちてしまうこともあります。さらに出血や化膿が起こり、元の状態に治療するのが非常に難しくなってしまうのです。
1-2 虫歯になっている
虫歯がひどくなった場合、歯の神経や歯茎などの周辺組織にまで炎症が及ぶ場合があります。その場合には、歯がむずむずする感覚に襲われることもあるでしょう。進行した虫歯が神経を刺激している場合、周辺の歯の感覚にまで影響を及ぼすため、その部分も含めてむずむずとうずいてしまいます。
虫歯の治療は早めに行えば軽度で済みますが、虫歯の炎症が神経にまで達している場合、歯の根まで削って殺菌する根管治療を行う必要があるため、注意が必要です。
1-3 親知らずが腫れている
親知らずのケアがうまく行われていなかったり、生え方などに問題があったりといった理由で、親知らずの周辺が腫れている場合にも歯がむずむずしてしまうことがあります。親知らずがうずく程度ならまだ初期段階ですが、進行すると強い痛みが生じたり、腫れや膿ができたりすることもあるのです。
そのまま放置していると、細菌感染が顎周辺から全身に及ぶこともあり危険なため、親知らず周辺がむずむずするときにも歯科の診察を受けましょう。
1-4 ストレス
強いストレスを受けると、体のいたるところに影響を及ぼすといわれます。その影響は歯にも及ぶことがあるのです。ストレスによって体の免疫力が低下し、歯のトラブルに発展するケースも見られます。
その他、ストレスを受けていることによって体に力が入り、歯を強く食いしばるなどといった力が加わることで歯が少しずつ動き、噛み合わせをくずしてしまう原因にもなります。
1-5 歯ぎしりや食いしばり
普段の噛み合わせだけではなく、睡眠中に歯ぎしりや歯の食いしばりを引き起こしてしまう方もいます。特に睡眠中に起こる場合は自分では対処することが難しく、意識しない間に歯に強い力がかかって、歯の根にヒビが入るなどの状態(歯根破折)が起こってしまうことがあるのです。歯の根が破損してしまうことで歯のむずむずが起こるだけではなく、痛みも発生します。こうした場合、睡眠中にマウスピースをはめて歯にかかる力を軽減するのが有効です。
また噛み合わせの悪さが、歯ぎしりをしたり過剰に歯を食いしばったりといった現象の原因になることもあります。そのような場合は、歯列矯正によって噛み合わせを調整したりするのがおすすめです。
1-6 その他の病気
上記のような原因に心当たりがない、また歯科の診察を受けても特に原因が見当たらないといった場合は、歯以外のところに原因があることも考えられます。物理的な原因だけではなく、神経系のバランスのくずれにより、むずむずした感覚やしびれのような感覚を覚える方もいるのです。
歯のむずむずについて原因がわからない、どの歯科を受診しても原因が見つからないといったときは、心療歯科を受診するのも1つの方法です。心療歯科は、歯科の観点と心理療法の観点から診察を受けることが可能で、心理的に問題を抱えていたり、自律神経のバランスがくずれていたりといった原因による歯の不快感にも、カウンセリングや認知行動療法などの方法で症状の改善に導きます。
2.自分でできる対策
2-1 正しいブラッシング・デンタルフロス
歯を常に清潔な状態に保って歯周病や虫歯などのリスクを減らすために、毎日正しくブラッシングを行うことは基本です。1日に2回、できれば食後のたびにブラッシングを行うことが理想です。また歯の間や、歯と歯茎の間にもプラークがたまりやすいですから、デンタルフロスを使ってきれいにしておきましょう。
出血がある場合には、無理をせず力を入れずに掃除をします。きれいな状態を保つことができれば炎症も治まってくるでしょう。
2-2 むずむずしても触らない
不快な歯のむずむずは、ついつい気になって触ってしまいがちです。しかし歯や歯茎にトラブルがある場合には、むやみにさわると傷がついてしまい、そこからさらに症状が悪化してしまう可能性もあります。
特に指で触ると雑菌が侵入し、むずむずした状態から痛みや腫れに発展することもありますから、できるだけ触らないようにするのがおすすめです。
2-3 上の歯と下の歯を出来るだけ合わせない
上の歯と下の歯が合わさっていると、その分歯に力がかかってしまいます。歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は特に、上下の歯を合わせないように意識してみるのも1つの方法です。歯への負担を少しでも減らすようにしてみましょう。
2-4 酒とたばこを控える
酒やたばこを嗜好品として好む方も多いでしょう。ストレスがたまったときに解消する方法として用いる方も多いかもしれません。しかし酒のアルコールやたばこのニコチンは、歯を強く食いしばるなどの原因となる場合があります。
その結果、歯根破折を起こして歯のむずむずにつながるケースもあるのです。歯のむずむずが気になるなら酒やたばこを控えてみましょう。
3.歯のむずむずを放置するとどうなる?
3-1 歯が抜けてしまう危険性
歯のむずむずが歯周病や虫歯からくるものであった場合、放置していると症状が悪化して歯を支える歯茎や骨が侵食されてしまいます。
その結果、歯が耐え切れずに抜けてしまうのです。歯がぐらぐらしてきたり、出血や膿がひどくなってきたりした場合は歯周病の末期です。歯が抜けてしまった歯は元に戻すことができませんから、注意が必要です。
3-2 最悪の場合命を落とすことも
歯周病や親知らずの炎症などによって、歯の周辺だけではなく顎にまで細菌感染が及んでしまうケースも見られます。細菌感染が進むと顎の血管に入り込み、そこから首、胸まで細菌が侵入すると、肺や心臓にまで炎症が起こる危険性も考えられるのです。ここまで発展してしまった場合には、肺炎や心筋炎を起こして、最悪の場合には命にかかわる重篤な状態になります。
ちなみに、親知らずなどから細菌感染が進み、死に至ったケースは症例の20%ともいわれています。歯のむずむずを放置していると命を落とすケースは確実に存在するため、放置するのは危険なのです。
4.まとめ
歯のむずむずは不快な症状ではありますが、痛みを伴わない状態では軽く見過ごしてしまいがちです。しかし、その症状にはときに重篤な症状の前触れが隠されていることが多く、放置していると歯がなくなってしまったり、最悪の場合は命を落としたり危険性もあります。
歯は一生付き合っていくものであると同時に、デリケートな器官でもあります。毎日のケアをしっかり行って大切に使っていきたいものです。そのためにブラッシングをきちんと行うこと、歯や周辺組織を痛めてしまう原因を少しでも減らすことが大切です。
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
執筆者:
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