痛くない虫歯は要注意!知っておくべき5つの原因と治療法

    痛くない虫歯は要注意!知っておくべき5つの原因と治療法

    「歯医者にずいぶん行ってないな…でも今は痛くないし…」と考えて、虫歯を放置している方も多いのではないでしょうか。その考えは、実は危険なのです。痛くないのに密かに進行する虫歯もあるからです。

    痛みという自覚症状がない虫歯の場合、歯医者に行くのがどうしても遅れます。そのため受診した時にはすでに虫歯が進行していて、抜歯や抜髄(神経を取ること)の処置を受けざるを得ない場合が出てきてしまうのです。

    日ごろから、ひどい痛みや炎症など大きなトラブルが起きるまで歯医者に行かない方は、歯を失うリスクが非常に高いと言わざるを得ません。健やかな未来のため、大切な歯を一本でも多く残せるように、ぜひこの記事を参考にしてください。

    この記事の目次

    1.痛くない虫歯5つの原因と治療法

    ここでは、痛みというはっきりした自覚症状がないため、なかなか自分では発見しづらい虫歯5つのパターンについて、その原因と治療法を詳しくご紹介していきます。

    1-1 神経が死んでしまった歯

    虫歯が神経に達すると、ズキズキと我慢できないような激しい痛みに襲われます。この時点でたいていの人は歯医者に駆け込むはずです。

    しかしこの時、痛み止めなどで一時的に痛みを抑えてしまうと、やがて痛みを感じなくなり、いつの間にか神経が弱って死んでしまう場合があります。

    また、打撲などの刺激や治療済みの歯の下に潜んでいた虫歯菌が、少しずつ神経を弱らせた場合も、痛みを感じないまま神経が死んでしまうことがあるので要注意です。鏡をのぞいた時、もしもグレーに変色している歯があれば、すでに神経が死んでいる可能性があります。

    ◎放置は厳禁

    死んだ神経をそのままにしていると腐って溶け、そこにできた空洞に細菌が繁殖します。そうなると膿がたまったり、歯の根の先に膿の袋ができたりして、激しい痛みや腫れを引き起こします。やがて歯を支える骨が溶け始め、全身に悪影響を及ぼすこともあります。神経が死んだ場合には、一刻も早い治療が必要です。

    ◎神経が死んでいるかどうかを見分ける方法

    ・歯の変色(白→ピンク→グレーへ)
    ・歯医者での熱刺激
    ・電気刺激による検査
    ・レントゲン撮影

    ◎治療法の例

    歯の上に穴を開け、死んだ神経をきれいに取り除いて消毒してから薬を詰めて、これ以上細菌が入り込まないようにふたをします。このような処置を行っても、痛みや腫れが治まらない場合には、抜歯を勧められる場合があります。また神経の治療を行っても膿がきれいに取り除けない場合には、歯ぐきを切開して穴を開け、膿を取り除く手術を行う場合があります。

    1-2 歯の根元にできる大人虫歯

    成人した方、特に30代以上に多いのが、歯の根元にできる虫歯、根面う蝕(こんめんうしょく)です。根面う蝕は、歯周病や間違ったブラッシング法によって歯ぐきが下がることにより起こります。

    歯の表面は通常、固いエナメル質で覆われているのですが、歯の根元は歯ぐきの中にあるため、柔らかいセメント質のすぐ下に象牙質があります。

    そのため虫歯になるとあっという間に象牙質に達し、気付いた時には抜歯や抜髄が必要になることが多いのです。根面う蝕は痛みを感じない場合が多く、いつの間にか進行する怖い虫歯だといえます。

    ◎治療法

    根面う蝕は歯ぐきの下に向かって進行するため、健康な部分と虫歯部分の区別が付きにくく、治療が難しい虫歯です。また次々と広がっていくことが多く、厄介な虫歯でもあります。初期の段階で発見すれば小さく削ってレジン(歯科用プラスチック)を詰める治療ですむため、日ごろからの検診が何より大切です。

    また根面う蝕の予防には歯周病の予防と改善が不可欠です。歯医者での定期的なクリーニングと家庭での正しいブラッシングで予防と改善に努めましょう。

    1-3 治療済みの歯の虫歯(二次カリエス)

    治療済みの歯にできる虫歯のことを二次カリエスといいます。治療から年数を経ると、詰め物や被せ物が劣化し、歯との間にすきまができます。そこから虫歯菌が入り、気付かぬうちに虫歯が進行するのです。

    二次カリエスは詰め物や被せ物の下や、詰め物や被せ物との境目など、見えないところや目立たないところにできやすく、痛みがないため放置しがちです。また過去に治療で削った歯にできるため、あっという間に深くまで進行します。

    詰め物や被せ物はとても汚れが付きやすく、お手入れがしづらいため、周りの歯にも悪影響を与えます。治療済みの歯こそ、プロの定期的なメンテナンスと丁寧なホームケアが必要なのです。

    ◎治療法

    レントゲンや虫歯検査機(レーザー光で虫歯の深さや大きさを数値化できる機械)、診察、または詰め物が外れたことがきっかけで二次カリエスが見つかった場合には、再度虫歯部分を取り除いて殺菌し、新しい詰め物や被せ物と取り換える治療を行います。

    虫歯が神経まで達している場合には、神経の治療も必要です。二次カリエスを治療するたびに、少しずつ健康な歯が削られていきます。歯を失わないためにも、歯医者で定期検診を受け、早期診断と早期治療に努めましょう。

    1-4 穴が開く前の初期虫歯

    虫歯になると、まず初めに虫歯菌の出す酸によって歯の表面のエナメル質が溶かされ、白く濁ってきます。この段階で虫歯を発見できれば、元の健康な歯に戻すことが可能です。

    初期虫歯には痛みなどの自覚症状がなく、見た目にも虫歯と分かりにくいため、定期検診を受けた時に発見される場合がほとんどです。定期検診を受けて、トラブルを未然に防ぎましょう。

    ◎治療法

    歯医者の定期検診では、診察やレントゲン、時には虫歯検査機なども使用し、虫歯の有無や深さについてきちんと調べていきます。初期虫歯が発見された場合には、虫歯の進行を食い止めるためブラッシング指導が行われるほか、歯の再石灰化(歯を元の健康な状態に戻す働き)を促すフッ素やリン酸カルシウムの塗布が行われる場合もあります。

    仮に削った方が良いと判断された場合でも、ほんの少し削ってレジンを詰めれば治療が終わるため、進行した虫歯と比べ、費用や時間、精神的な負担の全てが少なくて済みます。

    1-5 ゆっくりと進行する慢性の虫歯

    虫歯には急性虫歯と、慢性虫歯の二種類があります。急性虫歯は子どもや若い方に多く、歯が黄色から茶色に変色し、痛みが強く、あっという間に進行します。一方慢性虫歯は、大人に多く、歯の表面や溝の部分が黒く変色します。何年もかけてゆっくりと進行し、痛みなどの自覚症状がほとんどない虫歯です。

    慢性虫歯かどうかの判断は、プロでなければできません。気になるところがある方は、一度歯医者を受診し、虫歯検査機などを使った検査を受けてみてはいかがでしょう。

    ◎治療法

    定期的に検診を受け、虫歯の進行状態を確認してもらいましょう。進行が止まっている虫歯には、クリーニングやプラークコントロール(歯に付いた歯垢を減らすこと)のためのブラッシング指導、進行を抑える薬の塗布などが大変効果的です。歯の状態によって経過観察にするか、治療を行うかの判断は異なります。

    2.まとめ

    痛みという自覚症状のない虫歯を素人が発見するのは至難の業です。やはり歯を失うリスクを少しでも減らすには、日ごろからきちんと検診を受け、プロの目でチェックしてもらうことが必要になります。

    また、エナメル質にとどまっている初期虫歯の進行を食い止めて健康な歯を取り戻すには、ホームケアはもちろん、プロによるメンテナンスが不可欠です。痛みがない時にこそ歯医者を利用し、一生涯使う大切な歯を一本でも多く守っていきましょう。

    監修日:2016年06月01日
    髙村歯科医院
    高村 剛院長監修
    経歴・プロフィール

     1967年7月24日生まれ 
     1986年4月北海道医療大学歯学部入学
     1992年3月北海道医療大学歯学部卒業
     1992年4月同校付属病院第一口腔外科入局
     1993年10月北海道札幌市中央区にて医療法人社団飛天会たかむら歯科開設
     2004年10月東京港区にて医療法人社団高村歯科医院開設(移転開設)
     2010年3月 米国ロサンゼルスUCLA大学顎顔面外科短期留学
     2010年4月 日本大学歯学部附属病院第一口腔外科(非常勤)
     2011年9月 スウェーデン イエテボリ大学インプラント科研修
     2012年5月 米国デンマット 審美医療認定医取得
     2012年6月 米国インディアナ大学フェロー取得
     2013年1月 中国北京大学医学部名誉教授就任
     現在に至る

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    執筆者:歯科+編集部

    執筆者:歯科+編集部

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