現代病とも言われている肩こり。長時間、同じ姿勢でパソコンをしたりテレビを見たりしていると筋肉に負担がかかり、肩こりの原因になることは広く知られています。こうした原因のほかにも、虫歯になり歯の痛みが出てきた頃に、肩がこるようになった、肩こりがひどくなった、というケースもあります。
そこで今回は、虫歯と肩こりの関係についてご紹介します。虫歯がどのように肩こりの原因となっているのか、考えていきましょう。そして、虫歯を治療すれば肩こりは解消するのかなど、肩こりの治し方についてもご紹介します。この記事を参考に虫歯の痛みからも、肩のこりからも解放されましょう。
この記事の目次
1.虫歯で肩こりが起こる4つの原因
虫歯になると、どうして肩がこるのでしょうか?その原因を4つご紹介します。
1-1 虫歯になっている歯を避ける食べ方が原因
虫歯になると、痛みを感じる、冷たいものや甘いものがしみる、などの症状が出てきます。その状態で、虫歯のある方で食べ物を噛むとさらに痛みが増します。
そのため虫歯になると、無意識であっても虫歯の歯を避けて食べるようになるのです。虫歯のない方、つまり片側だけで噛む癖が体の歪みを引き起こし、肩こりの原因となってしまいます。
1-2 奥歯の神経が炎症を起こしている
奥歯は虫歯ができやすい歯と言えます。奥歯が虫歯になり、歯の神経が炎症を起こすと歯茎も炎症を起こし、その炎症は顎関節周囲の筋肉やリンパ腺にまで広がります。
同様に、親知らずが虫歯になった場合も、このように炎症が広がる可能性があります。このように顎関節周囲の筋肉やリンパ腺に炎症が広がると、首や肩に痛みが出てきますので、奥歯や親知らずが虫歯になると、肩こりを引き起こす可能性が高くなると言えます。
1-3 痛みを我慢して奥歯を噛み締めている
虫歯が進行して痛みを感じるようになると、その痛みを我慢しようと奥歯を噛み締めることが増えるでしょう。あるいは、顎や肩にぐっと力をこめることもあると思います。
そうした行為は筋肉に負荷がかかりますので、筋肉は緊張して疲れてきます。この筋肉の疲労が血行不良を招き、肩こりに結びつきます。
1-4 虫歯が痛むときに首を傾ける姿勢が原因
虫歯で痛みを感じると、上記のように痛みを我慢しようと奥歯を噛み締めたり顎や肩に力をこめたりするほか、痛い方に首を傾けることもあるでしょう。
痛みが続いている間、首を傾けて、およそ5~6kgの頭を支える姿勢でいると筋肉は硬くなり血行が悪くなります。その結果、首や肩のこりが現れます。
2.肩こりを治すには
虫歯と肩こりに関係があることはご理解いただけたと思いますが、では、虫歯が原因の肩こりを治すためにはどのような方法があるのでしょうか。
2-1 まずは虫歯を治療
虫歯が原因で肩がこっている場合、何よりも虫歯を治療することが大切です。原因でご説明したように、冷たいものや甘いものがしみるのも、奥歯の神経が炎症を起こしているのも、そして日常的に痛みを感じるようになるのも、虫歯が進行している証拠です。
虫歯で自覚症状が出るまで進行した場合は、ほぼ予防処置だけでは治りません。きちんと治療しないとますます虫歯は進行して痛みも強くなり、それに伴って肩こりもひどくなってしまいますので、まずは歯医者さんへ行って虫歯をしっかり治療するようにしましょう。
2-2 整体で施術を受ける
虫歯が原因の肩こりは、体の歪みや筋肉疲労による血行障害が原因で起きていることが多くなっています。そのため、整体で歪み改善や筋肉疲労解消、血行促進に効果がある施術を受けると、肩こりは軽減されるでしょう。
ただし、体の歪みや筋肉疲労は、生活習慣が原因ではなく虫歯が原因で起きたものなので、根本原因の虫歯を治療しないと肩こりを再発してしまいます。ですから、歯医者さんでの虫歯治療を優先させたうえで、整体の施術も受けることをおすすめします。
2-3 正しい噛み合わせで肩こり予防
虫歯をきちんと治療すると、痛みや炎症は収まります。しかし、片側ばかりで噛むことや噛みしめることが癖になっていると、虫歯が治っても噛み合わせが悪い状態が続いてしまいます。
ですから虫歯を治療して痛みがなくなってからは、両側で同じように噛むように心がけましょう。そうすることで正しい噛み合わせになり、肩こりを予防することができます。
2-4 一時的にしのぐ鎮痛剤
「虫歯は治療しないといけない」「早めに歯医者さんへ行かないと悪化する」ということはわかっていても、仕事や育児などで、すぐに通院の時間が取れないという方もいるでしょう。
そのような場合は、抗炎症薬を含んだフェルビナクや、消炎鎮痛成分を含んだサリチル酸グリコールなどを使用することで、一時的に痛みを和らげることができます。しかし、一時的にしのぐためのものですので、時間を見つけてきちんと歯医者さんへ行くようにしましょう。
3.虫歯治療後の肩こりについて
虫歯が原因の肩こりの場合、虫歯を治療すれば肩こりも解消するケースが大半です。しかしごく稀に、治療後に肩こりが続くことも考えられますので、その原因と対処法をご紹介します。
3-1 原因
■治療による噛み合わせの変化
噛み合わせは、髪の毛1本噛んだだけでもわかる、あるいは数十ミクロンの差でも違和感を覚えるなどと言われるほど、とてもデリケートなものです。
ですから、虫歯治療のために歯を削り詰め物をするときに、歯医者さんは細心の注意を払いますが、それでもわずかに噛み合わせが変化してしまうこともあるのです。その変化がごくわずかなものでも、肩こりにつながる場合があります。
3-2 対処法
■再治療
虫歯を治療する際、歯医者さんも慎重に微調整しますが、それでもわずかに変化してしまうことはあります。ですから、再度噛み合わせを整えてもらいましょう。具体的には、治療した歯の周囲の歯を微量削ったり、場合によっては詰め物を作り直すこともあります。
わずかな噛み合わせの違和感は本人にしかわかりませんので、その違和感がなくなるまで何度も相談し、調整してもらうことが大切です。
■定期的なメンテナンス
虫歯の治療後や再治療後は噛み合わせの違和感がなく、肩こりも解消されても、時間が経つにつれ噛み合わせが変化する場合もあります。
それは、加齢によって歯がすり減ったり、詰め物が欠けたりすることが原因です。ですから直後は違和感がなくても、虫歯予防や正しい噛み合わせを保つために、定期的にメンテナンスを受けることは有効です。
4.まとめ
虫歯の進行は、歯の痛みや炎症を引き起こすだけではなく肩こりの原因にもなってしまいます。その状態で様子を見ていると、虫歯が悪化するのはもちろん、肩こりも慢性化してしまうでしょう。
ですから早めに歯医者さんへ行って虫歯の治療をすること、必要であれば整体などの施術を受けることをおすすめします。そして、再び虫歯が原因の肩こりにならないような生活を心がけましょう。
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
執筆者:
歯科+では、読者の方々のお口・歯に関する”お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。