虫歯はある日突然、こちらの都合を考えずにいきなり痛みだすものです。虫歯特有のズキズキとした我慢できないほどの痛みを経験したことのある人もいるでしょう。歯の痛みが強いときは食事を摂ることはおろか、眠ることもできません。
もちろん、すぐに歯医者さんに行って診察してもらうことができるなら、それが一番良いですが、とりあえずそれまでに自分でできる応急処置をいくつかご紹介します。
応急処置、してはいけないこと、虫歯が痛いときにはどんな状態になっているのか、また注意する痛みについてもお伝えしますので、参考にしてみてください。
この記事の目次
1.痛みが強いときの6つの応急処置
痛みが強いときに、自分でできる応急処置を6つご紹介します。少しでも痛みが軽くなるように、併用してもよいでしょう。
1-1 口腔内をきれいにする
もし、口の中が汚れている状態なら、きれいにしましょう。虫歯の部分に汚れや食べかすなどが入ると、さらに痛みが強くなることがあります。歯磨き、デンタルフロスで汚れを取り除きましょう。
ただ、そのときに痛い虫歯を刺激してしまうと、もっと痛みが強くなってしまうこともあるので、注意が必要です。うがいも効果的であり、殺菌効果のあるうがい薬を使用すると落ち着くこともあります。
1-2 痛い部分を冷やす
虫歯の痛みは、冷やすことで軽減する場合があります。急激に冷やすことはおすすめしませんが、市販の熱用シートや冷たい水で濡らしたタオルなどで頬を冷やしてみましょう。
また、直接歯を冷やすと逆効果になることもあるので、注意が必要です。痛みが出ている虫歯はとても敏感になっていることが多く、より痛みが強くなってしまうこともあります。
1-3 鎮痛剤を服用する
痛みが我慢できないときには、鎮痛剤を服用してみましょう。普段飲みなれている鎮痛剤が安心です。鎮痛剤は胃を荒らすこともあるので、なるべく空腹時の服用は避けたほうが良いでしょう。容量、用法は必ず守って正しく服用するようにしてください。
1-4 薬を詰める
虫歯の部分に直接詰める薬があります。正露丸は適当な大きさにしてから直接虫歯に詰めます。糖衣錠には虫歯の痛みを抑える効果はないようなので、注意しましょう。
また、今治水は綿を小さく丸めたものに、今治水をつけてそれを虫歯部分に詰めます。殺菌効果が高く、痛みが和らぎます。今治水には、液体、ゲルタイプ、飲み薬のタイプがあります。
使用方法を守って正しく使用しましょう。どちらも一時的に痛みを和らげるのには効果的なお薬です。
1-5 ツボを刺激する
歯の痛みを抑えるのは手にある「合谷」や「歯痛点」また頬にある「下関」「頬車」というツボです。合谷は歯の痛みには効果があります。すこし痛みを感じる程度に押したりもんだりします。
1-6 民間療法を試す
民間療法にはさまざまな方法があるようですが、効果は定かではないためおすすめできません。また効果があったとしても一時しのぎに過ぎないことを理解しましょう。
2.歯痛がひどいときにしてはいけないこと
虫歯の痛みがひどいときに、避けたほうがよいことがいくつかあります。よいと思ってしても逆効果になりかねませんので、注意しましょう。
2-1 お風呂に入る
虫歯が痛いときは、お風呂は控えましょう。温めると血液の循環がよくなるため痛みが悪化する可能性があります。お風呂に入りたいと思っても歯が痛いときにはシャワーを浴びて我慢しましょう。
2-2 煙草を吸う
タバコを吸うとその刺激で痛みが悪化します。気分転換をしようと思っても、痛みが悪化すれば意味がありません。虫歯の痛みがあるうちは、煙草は吸わないようにしましょう。
2-3 いじらない
虫歯の痛い部分が気になって触ってしまうことがありますが、なるべく触らないようにしましょう。刺激を与えることで痛みが強くなってしまいます。またさらにばい菌が入る可能性もあります。
2-4 お酒を飲む
虫歯が痛いときには、お酒を飲むのは控えたほうが良いでしょう。お風呂同様血行がよくなり、痛みがひどくなります。
2-5 激しい運動
虫歯が痛いときの運動は避けましょう。運動すると血行がよくなって痛みが強くなります。
3.ひどい歯痛が起こったときの状態
虫歯で歯がひどく痛むときには、思わぬ状態になっていることがあります。
3-1 歯髄炎を起こしている
歯髄炎とは、歯の中の歯髄(神経や血管など)が虫歯菌により炎症を起こして腫れる症状です。血液が歯の中であふれかえり、それが神経を圧迫して痛みとなります。
その痛みはかなりひどく、眠れないこともあるほどです。虫歯だけでなく、歯周病や破折、外傷などによっても引き起こされます。歯髄炎になると神経を抜く治療が必要です。
3-2 虫歯の痛みに頭痛や嘔吐を伴う場合は注意が必要
虫歯が痛いとき、頭痛を引き起こすことがあります。緊張型頭痛、顎関節症による頭痛、脳炎などです。緊張型頭痛の場合は、肩こりや首のはりを伴い緊急の危険性はありません。
虫歯による顎関節症が原因の頭痛は、歯の高さがあわなくなりかみ合わせが悪くなることで起こります。顎関節症は悪化すると口があかなくなり手術が必要になることもあるので気をつけましょう。一番怖いのは頭痛や嘔吐が伴うときです。
虫歯による歯痛、頭痛、嘔吐、けいれん、運動障害、意識障害があるときには脳炎や脳静脈血栓症の可能性があります。放置すると死亡することもある怖い病気なので、様子がおかしいなと思ったらなるべく早く病院へ行きましょう。
4.なるべく早く歯科受診をしよう
虫歯の歯の痛みは、虫歯を治療しないと治りません。
4-1 救急医に診てもらう
休日や、夜間など、虫歯が急に痛くなったときには救急医を利用しましょう。地域によりますが、救急医療センターや歯科医院で当直医になっている歯医者さんがいるはずです。
4-2 かかりつけの歯医者さんに行く
応急処置をして、危険性がなく痛みが我慢できる程度なら、診察時間内にかかりつけの歯医者さんに診てもらいましょう。通常は予約制で診察している歯医者さんが多いですが、虫歯の痛みなどがある場合には、相談すればその日のうちに予約を入れてくれることが多いです。
初診では受け入れてもらえないこともあるので、普段からかかりつけの歯医者さんを持っておくことが大切です。
5.まとめ
虫歯が痛いときはとりあえず応急処置で痛みを和らげましょう。しかし、あくまでも応急処置はその場しのぎであり痛みの原因である虫歯を治すわけではありません。ですから虫歯の痛みがある場合にはなるべく早く歯医者さんへ行き、治療をしてもらいましょう。
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
執筆者:
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